大都市を構成する橋梁や都市トンネルを中心とする交通インフラストラクチャーの耐震性向上技術を開発する。具体的には、構造系や構造部材の動的耐力、変形性能を明らかにし、新材料、新工法を用いた耐震性向上技術を開発すると同時に、免震技術やセミアクティブコントロールを用いた交通施設の新しい耐震性能向上技術を開発する。また、既存の都市インフラストラクチャーの耐震性判定技術の開発、耐震補強技術の開発を行う。
1995年兵庫県南部地震では、都市を支えるインフラストラクチャー、特に橋梁や都市トンネルを中心とする交通施設の 脆弱性が明らかになりました。地震後の調査では都市生活者にもっとも深刻な影響を与えた被害は交通施設の不通があった ことがわかっています。このため、兵庫県南部地震のような都市直下型地震に対しても都市機能の低下を最小限に抑える ことのできる都市インフラストラクチャーの耐震技術の開発が必要とされています。また、現在までに建設された膨大な 都市インフラストラクチャーの中には現在の目から見ると、耐震性が不十分なものが多数存在します。こうした既存都市 インフラストラクチャーの耐震性を適切に判断し、必要があれば耐震性を向上させることのできる技術が必要とされています。 こうした点に関して、当研究室では、先端技術、先端材料を用いた新しい耐震性向上技術を開発しています。
強震動下の都市インフラストラクチャーの耐震性を向上させるためには、 塑性ヒンジ化する部材の動的耐力・変形性能の向上が重要です。
当研究室では、実地震時に構造物に作用する地震力をディジタル制御により
3次元的に再現できる高精度地震作用シミュレーターを有し、動的耐力と同時に 変形性能の高い部材の開発を進めています。アーチ橋の主部材のように大地震時に
引張力を受けたり、都市部に多い逆L字型橋脚のように常時の荷重により偏心曲げモーメントを 受ける条件下で水平地震力を受ける場合のように、過酷な地震条件下における構造部材の特性を
明らかにしています。また、高密度に帯鉄筋で横拘束したカラムを配置し、 この間を連結したDASC橋脚、塑性ヒンジ領域に免震ゴムを埋め込み、地震時に被害を
受けないようにした免震装置ビルドイン型橋脚、高強度コンクリートを用いた構造等、 変形性能が大きく、大地震時にも被害を受けない都市インフラストラクチャーの開発を行っています。
さらに、近年台湾やトルコの地震では断層変位によって構造物が被害を受けた事例が あります。断層が生じても被害を免れるようにすることはきわめて困難な課題ですが、
我が国でも将来主要な交通施設が大規模な断層によって大被害を生じる可能性が高いことから、
断層変位によって構造物が致命的な被害を受けなくてもすむ耐震技術の開発も進めています。
減衰力を構造物の応答に応じて任意に変化させて構造物の応答制御を行うバリアブルダンパーの開発を進めています。バリアブルダンパーはセミアクティブダンパーの1種で、制御エネルギーが少ないことから都市インフラストラクチャーに対する適用性がよいことが明らかになりつつあります。とくに、磁場を与えると減衰が変化するMRダンパーを用いたバリアブルダンパーの開発に重点を置き、大規模地震時に橋梁構造物が被害を受けないようにするために最適な制御アルゴリズムの開発を行っています。現在までに2段階摩擦型減衰制御法等が開発されています。
特性の異なった都市インフラストラクチャーの耐震性を正確に判定し、危険度に応じた耐震補強優先度の評価を行うことは大変難しいことです。当研究室では強震動下の橋の特性を考慮した耐震性判定法を開発すると同時に、新材料、新工法を用いた耐震補強法の開発を行っています。カーボンファイバーを用いた耐震補強や基礎ロッキング免震、基礎周辺免震等の方法を開発しています。
論文: Kawashima, K. et al “Residual Displacement Response Spectrum,” Journal of Structural Engineering, ASCE, pp. 523-530, 1995など、250編 著書:地下構造物の耐震設計、橋梁の耐震設計、耐震補強等、訳書を含めて4冊 特許:橋梁用バリアブルダンパー装置(特許第2615397)など7件 プロジェクト参画:文部科学省特定領域研究(B)「日米共同研究による都市地震災害の軽減」など 受賞: 土木学会論文奨励賞(1981)、田中賞(1991)、吉田賞(1997)など